Vol.09:『その一員として~パフォーマンス~』

「マーチングとは、吹奏楽の静的な要素に動的な要素を加味したもの」(『日本マーチングバンド協会』)です。その効果は多々あり、そのアプローチの方法も多々あります。ただひとつ確実に言えることは、「マーチングは音楽活動」であるということです。

ところで、芸術と呼ばれるものには多くのものがあります。できた瞬間に記録媒体に収めない限りはその形が残らない、という点で音楽は他の芸術とは異なりますが、どの芸術にも共通しているのは、外部に発信されるものだということです。つまり、音楽で言えば、聴く側あっての存在なのです。

このような活動に際してもっとも大切なことは、その対象である“外部”の存在を意識することと“何を発信する”のかということです。マーチングでも、観客の視点を意識して自分たちの意思(バンドやショウのカラー、コンセプト等)をどのようにして伝えるか、が大切です。

さて、ここでは、観客の視点を意識するといった観点からマーチングを捉えてみましょう。

遊園地などに行くと、大道芸などのパフォーマンスを見ることができます。それらは非常に愉快で魅力に満ちています。観客とコミュニケーションを取りながら、常に観客に向けてパフォーマンスが繰り広げられます。展開も2度は同じ展開がなく、時に急速で、時に緩慢で、観客の注意を惹きつけて止みません。近くの観客から遠くの観客までをすっかり虜にしてしまいます。彼らは限られた時間内で精一杯のショウを展開し、ひとつひとつのパフォーマンスで観客を楽しませてくれます。周囲を観客に囲まれながら臆することなく堂々としている様には、憧れすら覚えるでしょう。

しかしながら、彼らにとってそれらのことは、“当たり前のこと”で“大切なこと”なのです。“showmanship”という1語で表すことができるその“当たり前のこと”で“大切なこと”は、実はマーチングにも“当たり前のこと”で“大切なこと”なのではないでしょうか。

観客の視点を意識するということは、どのような位置から観客に見られているか(観客はどこにいるか)、どのように見られているか(観客は何を期待しているのか)、といったことを意識することに他なりません。正面にいる観客ばかりに照準を合わせたショウでは、反対側にいる観客は興醒めてしまうでしょう。展開が一辺倒であったり、クライマックスがはっきりしていなかったりすれば、観客の印象は決して良くはないでしょう。そして、そのようなショウでは、自分たちの意志すら十分には伝えられないでしょう。

「マーチングは音楽活動」です。観客の視点を意識して、自分たちの意思をどのようにして伝えるかが大切です。自分たちのカラーやコンセプトを持つことは、大変重要なことですが、それと同様に、“showmanship”は“当たり前のこと”で“大切なこと”なのです。外部に発信されてはじめて形を為す、芸術のひとつであるマーチングを行う、その一員として。

 

※こちらは、2002年8月12日に書き、2010年6月23日に一部修正した記事です。

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