Vol.03:『マーチング・コーディネイト』

今現在、日本には多くのマーチングバンド指導者が活躍をしていらっしゃいます。公的な資格として『日本マーチングバンド協会』(JAPAN MARCHING BAND ASSOCIATION)のライセンスを取得された方、アメリカでいわゆる世界トップのマーチング・バンドに入団し、その経験をもとに指導をされている方、または国内バンドでの経験を活かして指導をされている方、あるいは吹奏楽の指導をしているうちにマーチングの指導をすることになってしまった方まで、様々です。そして、皆さんInstructor、もしくはDirectorと称され、指導からショウの構成まで、幅広く活動をされています。現在に至るマーチングバンドの普及は、そういった方々の努力の結晶でしょう。

しかし、指導者というものは、一歩間違えれば自分のやりたいこと押し付けるだけになってしまう危険な職でもあります。そうなってしまうと、バンドもしくはプレイヤーの個性を損なってしまうこととなり、魅力を著しく低下させることとなります。そのようなことにならないために、Instructする(教える)という考え方ではなく、Coordinateする(組み合わせる・調整する)という考え方を持つように、僕は心掛けています。ショウの構成についても同じように、Directする(演出する・構成する)という考え方ではなく、Coordinateします。これを簡単に言ってしまうと、そこにある材料でできることをやる、ということです。必要以上の無理をしないこと、とも言えるでしょうか。

例えば、AというフォーメーションからBというフォーメーションへと転換をしたいときに、その移動過程としてa・b・c・・・・といったように、いくつかの過程を用意し、そのなかで一番プレイヤーにレベルのあったものを選択します。また、Bの代替案としてB’を考えておき、Bへの移動過程のうちに適応するものがないときには、フォーメーション自体を組替えるようにします。そのようにして、プレイヤーのレベルに合致したものを作り上げていきます。ただし、ここで音楽に見合った動きにするということを注意しなくてはなりません。たとえプレイヤーのレベルに合致していても、音楽表現とかみ合った動きでなければ、そのフォーメーションの観客に訴える力は、演奏を後押しすることはなく、むしろ半減させることにしかならないのですから。さらに、やりたい演出が音楽に合致するものでなければ、これもまた見直す必要があります。

また、選曲に関しても、過度の無理をさせることのないように、配慮が必要になってくるでしょう。楽器を始めたばかりの子どもに難易度の高いものを演奏させることは、明らかに無理なことですし、動きによって見せようとする場面では、演奏面での負担は軽減されるべきでしょう。

数多くある選択肢の中から、プレイヤーのレベルに合わせて選曲や演出、コンテ上のフォーメーションを選択し、組み合わせる。または、調整する。このCoordinateをするという考え方は、そのバンドもしくはプレイヤーの持つ魅力を引き出すこととなり、その力を発揮させ、倍増させることとなるのではないでしょうか。自分の考え方ややりたいことではなく、バンドやプレイヤーの持つ力を十二分に意識することが必要です。

 

※こちらは、2000年12月10日に書き、2010年6月23日に一部修正・加筆した記事です。

Comments are closed.