Vol.02:『ステージ・マーチング~曲者~』

日本におけるマーチングの形態として、最も多いのはステージ・マーチングでしょう。今も多くの高校生・大学生がステージを作っていることでしょうが、日本特有の形態であると言われるこのステージ・マーチング、なかなかの曲者なのです。

多くのマーチング・ファンを魅了してやまないDCI(Drum Corps International)。そして、日本のマーチング・バンドが目標としてその舞台を目指す『さいたまスーパー・アリーナ』(かつては『日本武道館』)。しかし、それをそっくりステージに当てはめてしまうのは、タブーと言えます。なぜなら、環境上の違いが大きいからです。

その違いですが、まず第1には、視角の違いです。フィールドやフロアでは下方向以外全面から視線が注がれるのに対して、ステージでは、前方の、それもフラットな高さから30°~45°の高さまでに限られるということです。第2には、その使用面積です。およそですが、フィールドでは70m×120m、フロアでは30m×30m、ステージでは15m×20mとなっています。第3には、舞台装置。フィールドやフロアでは通常、照明等は使われませんが、ステージにはそれが常設されています。また、舞台袖や幕などもステージ特有のものと言えます。

これらを踏まえて、ステージ・マーチングで気を付けるべきことを挙げておきます。

まずは、コンテを描くときに、それは上から見た図であって、実際の見え方とは大きく違うということです。コップを真上から見たのと斜めから見たのとでは、飲み口がまるで違った形に見えますが、それと同じです。加えて言えることですが、後ろにいる人ほど前の人に隠れることになります。つまり、見せたい人や見せたいパートについては、なるべく前方に配置する、もしくは後方においても前方の人が重ならないようにするといったことが大切です。

つぎに、人数について、これは僕の持論ですが、使用スペースに5mおきにポイントを打ち、そのポイントに囲まれる四角の数×3=使用スペースにおける標準人数、です。つまりは、15m×20mのスペースであれば、四角が12個なので、36人がコンテ上に乗せる標準人数として考えられます。これ以上になると、各個の移動範囲が制限されるばかりか、全体としての見映えも悪化します。

また、視角を意識するあまりに、動きや振り付けが画一化してしまいがちですが、そのようなときは、ステージという環境の良さを十二分に活用します。この際、マーチングは動きで見せるもの、といった概念は捨てて、動きで見せたほうが効果的な部分、振りで見せたい部分、音楽を聞かせたい部分とを冷静に判断し、それぞれ限定していくといいでしょう。舞台装置のあるステージならではの、舞台袖を有効的に使った人数の増減や、ドライ・アイスや各種の幕、ロスコなどを用いて、演出面に様々な工夫ができるのですから。ただし、これらを用いる際には、ホール関係者などの専門的な方との打ち合わせは欠かさないようにしましょう。

さて、以上述べてきましたが、ステージ・マーチングには大きな可能性が秘められています。よく「宝石箱を開けたようなもの」と表されますが、僕からすると本当に曲者です。

 

※こちらは、2000年11月30日に書き、2010年6月23日及び2020年3月14日に一部修正・加筆した記事です。

※飽和人数(許容限界人数)ついては、5mおきに打たれたポイントに囲まれる四角の数×6と考えています。

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